第9回 特許申請書作成/明細書

 図面が完成したら
 次に明細書を作成しましょう!

 まず…明細書のうちの
 「発明を実施するための形態」

 の全体構成を考えます

 例えば
 ・実施形態1(基本構成) 図1
 ・実施形態2(変形例)  図2
 ・実施形態3(改良例)  図3
 ・実施形態4(応用例)  図4
 ・効果の説明       図5

 といった具合にします

 この後…明細書テンプレート
 にしたがって
 各項目を埋めていきます

 電子出願ソフトサポートサイト
 明細書テンプレート

 ただ…上記テンプレートは
 形式的事項しか示していません

 そこで…以下では実質的な書き方
 について説明していきます

 
 なお…以下を簡潔にまとめたもの
 知カツ・全書類テンプレートを
 はつめい鑑定にて提供しています

 是非…ゲットしてください!

・発明の名称
 特許請求の範囲(独立項)の名称
 を発明の名称とします

 うえの例では
 「回転補助器」となります

 発明の名称を具体的に書くと
 意図しない限定が入ってしまったり
 するので

 一言で簡潔に書くように
 しましょう

 ・技術分野
 ここは、発明の名称と同じにします

 例えば
 
「本発明は、回転補助器に関する」
 
でOKです

 ただ
 明細書ははつめいを説明するもの
 なので

 はつめいを限定しない範囲で
 
もうすこし具体的に書いてもOKです

 例えば
 
「本発明は、容器のふたやホース接続器などのネジ部を有する物品の該ネジ部の回転を補助する回転補助器に関する」

 とすれば、さらに良いです

 ・背景技術
 短く、簡潔に…
 
書きましょう!

 注意点は、書き過ぎないこと

 リサーチ&リビューなどで
 
先行技術文献がみつかったときは
 
それについて簡単に述べる
 
だけでOKです

 例えば
 
「従来、ビンのふた開けを補助するふた開け器は、ゴムリングからなるものが知られている(文献1)。」

 など…

 ・先行技術文献
 
リサーチ&リビューで見つかったあなたのはつめいに最も関連する文献を記載しましょう!

 ・発明の概要
 ここには、課題、手段、効果
 
を記載します

 課題の欄は
 
文献1の問題点と
 
本発明の目的を記載しましょう!

 例えば
 「文献1のふた開け器は、ふたとゴムリングが十分に密着せず、すべってふたを開けることができない。また、文献1のふた開け器は、ビンのふたのみを対象とし、ペットボトルのふたやふた以外のネジ部、例えば、2つのホースをつなぐダブルタップのネジ部に使用することができない。」

 「本発明は、物品のネジ部とゴム材を十分に密着させることで、該ネジ部の回転を確実に補助する回転補助器を提供することを目的とする。」

 など…
 といった具合にすればOKです

 手段の欄は
 
特許請求の範囲(請求項1)を
 
コピペしましょう

 例えば
 
「上記目的を達成するため、本発明は、表面に凹凸をもち、その表面が曲面を有する2つのゴム材からなる把持部と、2つの棒状体からなり、2つのゴム材の裏面がそれぞれ取り付けられる取っ手と、を備え、2つの棒状体の一端は、回転軸として結合され、2つの棒状体の他端は、回転軸を中心に開閉可能であり、取っ手は、2つの棒状体が閉のときに2つのゴム材の凹凸が物品のネジ部のふちに密着してネジ部の回転を補助するように構成されている、回転補助器、を要旨とする。」

 など…
 
といった具合にすればOKです

 効果の欄は
 
本発明の目的と同じこと
 
を書きましょう

 例えば
 「本発明によれば、物品のネジ部とゴム材を十分に密着させることで、該ネジ部の回転を確実に補助する回転補助器を提供できる。」

 など…
 といった具合にすればOKです

 ・図面の簡単な説明
 この項目のとおり
 
簡単に説明しましょう!

 例えば
 
図1は、本発明の実施形態1を示す図、
 
図2は、本発明の実施形態2を示す図、
 
図3は、本発明の実施形態3を示す図、
 
図4は、本発明の実施形態4を示す図、
 
図5は、本発明の効果について説明する図である。

 など…
 のように記載します

 ★★★
 ・発明を実施するための形態

 この欄は…予め作成しておいた
 うえの全体構成に従い
 順次説明していきます

 実務では
 ここがもっとも面倒なところ
 です…が

 がんばっていきましょう!

 まず
 各実施形態を説明するまえに

 予め定義しておいた
 
ほうがよいと思われる文言
 があるときは

 それについて定義して
 おきます

 それにより
 後の説明が分かり易くなるし

 なにより…その文言を使用して
 
特許請求の範囲を簡潔に
 記載できるからです

 例えば
 
「ゴム材の表面とは、本発明に係る回転補助器の適用対象となる物品のネジ部のふちに接触する側の面のことをいう」とか…

 「2つの棒状体の一端が回転軸として結合されている場合における2つの棒状体の他端の開閉に関し、開状態とは、2つの棒状体の他端が互いに離れ、かつゴム材の表面が物品のネジ部のふちに密着し得ない状態を意味し、閉状態とは、2つの棒状体の他端が互いに近接又は一致し、かつゴム材の表面が物品のネジ部のふちに密着し得る状態を意味する」とか…

 といった具合に必要な定義規定
 を
記載しておきます

 次に…最も重要な
 
各実施形態の書き方ですが…

 むやみに一から書くのは
 やめましょう!

 書き忘れや抜けが必ず
 
発生するからです

 そのような書き忘れや抜けが
 生じないようにするには…

 ここ!
 第一のポイントです

 まず…特許請求の範囲を
 
コピペしましょう

 例えば
 実施形態1(図1)の説明に
 あたっては

 特許請求の範囲の請求項1
 すなわち
 「表面に凹凸をもち、その表面が曲面を有する2つのゴム材からなる把持部と、2つの棒状体からなり、2つのゴム材の裏面がそれぞれ取り付けられる取っ手と、を備え、2つの棒状体の一端は、回転軸として結合され、2つの棒状体の他端は、回転軸を中心に開閉可能であり、取っ手は、2つの棒状体が閉のときに2つのゴム材の凹凸が物品のネジ部のふちに密着してネジ部の回転を補助するように構成されている、回転補助器」

 をコピペします

 そして
 これを文書化する作業を行います

 例えば、以下のように…

 「本発明の実施形態1に係る回転補助器は、把持部11と、取っ手13と、を備える。把持部11は、2つのゴム材11a. 11bからなる。2つのゴム材11a. 11bは、それぞれ、その表面S1に凹凸10をもち、その表面S1が曲面を有する。取っ手13は、2つの棒状体12a, 12bからなる。2つのゴム材11a, 11bの裏面S2は、それぞれ、2つの棒状体12a, 12bに取り付けられる。」

 「2つの棒状体12a, 12bの一端は回転軸AXとして結合される。2つの棒状体12a, 12bの他端は、回転軸AXを中心に開閉可能である。」

 「取っ手13は、2つの棒状体12a, 12bが閉のときに2つのゴム材11a, 11bの凹凸10が物品のネジ部のふちに密着してネジ部の回転を補助するように構成されている。」

 そして
 第二のポイントです!

 この作業を行うと同時に
 各要素についての
 
補強説明を追加していきます

 例えば
 「本発明の実施形態1に係る回転補助器は、把持部11と、取っ手13と、を備える。把持部11は、2つのゴム材11a. 11bからなる。2つのゴム材11a. 11bは、それぞれ、その表面S1に凹凸10をもち、その表面S1が曲面を有する。取っ手13は、2つの棒状体12a, 12bからなる。2つのゴム材11a, 11bの裏面S2は、それぞれ、2つの棒状体12a, 12bに取り付けられる。」

 の後に
 「2つのゴム材11a. 11bは、例えば、それぞれが物品のネジ部のふちに沿うように短冊状を有する。」とか…

 「表面S1の凹凸10は、物品のネジ部のふちに沿って凹部と凸部が繰り返される歯車状を有するのが好ましい。」とか…

 「表面S1の曲面は、物品のネジ部のふちの曲面に対応している」とか…

 といった具合に
 各要素の説明を行っていきます

 また
 この補強説明では

 使い方(又は操作方法)とか
 製法とか
 
部材の材質(種類)や寸法(範囲)とか

 といった
 
好ましい事例を挙げていきます

 例えば
 使い方に関し

 「本発明に係る回転補助器を用いて物品のネジ部の回転(開閉)を補助する操作は、まず、2つの棒状体12a, 12bを開状態にし、その状態のまま把持部11の2つのゴム材11a. 11bの表面を物品のネジ部のふちに対応する位置に配置する。」

 「そして、その位置で、2つの棒状体12a, 12bを閉状態にすることで、2つのゴム材11a. 11bの表面を物品のネジ部のふちに密着させる。」

 「この後、閉状態のまま2つの棒状体12a, 12bの他端を物品のネジ部を中心に回転させると、テコの原理により弱いちからでも容易に物品のネジ部を回転させることができる。」

 といった具合に説明します

 このようにして
 
各実施形態を書いていきます

 ひとつ注意点です

 補強説明するにあたっては
 
なるべく
 
はつめいと関連する部分について
 
説明すること

 例えば
 
本発明の目的は
物品のネジ部とゴム材を十分に密着させることで該ネジ部の回転を確実に補助すること

 にあるので

 ゴム材は、合成ゴムでも
 
天然ゴムでもよい、とか

 ゴム材の厚さは
 
0.5mm以上、5mm以下
 
(例えば、1mm)である
 
のが好ましい、とか

 ネジ部に回転力を伝える
 
2つの棒状体の長さは
 
回転の容易性(テコの原理)を考慮し
 
下限は150mm以上
 
操作の容易性を考慮し
 
上限は300mm以下
 
であるのが好ましい、とか

 といったものを追加すると
 
良い明細書になります

 一方
 
書いてもよいですが…
 
あまりはつめいと関係ないこと

 例えば
 
容器のふたの説明までは
 
いいのですが…

 容器がペットボトルの場合
 
その材質は合成樹脂
 
(ポリエチレンテレフタラート:PET)
 
である、とか

 いったものは
 
書かなくていいと思います

 ここで言いたいのは

 たまに
 
わき道にそれて

 はつめいと関係ない部分
 
の説明を詳細に行って
 
しまった結果

 じぶんのはつめいが
 
何なのか…

 よく分からなくなっている
 
明細書をみかけるので

 そのようにならないように
 
注意しましょう!

 ということです

 次に
 
書く順番ですが…

 すでに検討した全体構成
 
に従い

・実施形態1(基本構成) 図1
・実施形態2(変形例)  図2
・実施形態3(改良例)  図3
・実施形態4(応用例)  図4
・効果の説明       図5

 の順で説明していきましょう

 ここで、第三のポイント!

 書きながら…
 
上記のように、各要素に符号
 (例えば、把持部11…)
 
を与えていくと同時に

 その要素に対応する
 
既に作成してある図面の各要素にも
 
同様に
符号

 例えば
 
「把持部11」に対応する
 
図面の
要素には「11」を

 順番に付していきましょう

 このように
 
図面を先に作成しておき

 明細書を書いていく段階で
 
明細書や図面にでてくる
 
各要素に符号を付すことで

 例えば
 
符号を小さいほうから順番に付す
 
ことができるし

 なにより
 
符号の付し忘れや
 
符号の重複など

 を防止することができます

 以上…
 
3つのポイントとともに
 
明細書の書き方(フロー)
 
について説明しました

 なお、発明を実施するための形態
 
(実施形態)の説明は
 
あくまで、あなたのはつめい
 
の一例なので

 いろいろ書いておくのが
 
よいですが…

 行き過ぎ…

 例えば
 
はつめいを不要に限定したり
 
しなよう…

 注意しましょう!

 この項目の最後に一言
 
(最初でもOKです)

 「以上の説明は発明を限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、省略、置換、変更等を行えることは言うまでもない」

 といったような定型文を
 
挿入しておくのも効果的です

 ・符号の説明
 
発明を実施するための形態を
 
書き終えたら

 最後に
 
符号の説明を書いて
 
明細書の完成です

 符号の説明は
 
すべての符号を説明する
 
必要はありません

 図1に付されているもの
 
のみを

 例えば
 
10…凹凸、
 
11a, 11b…ゴム材、
 
12a, 12b…棒状体、
 
13…取っ手。

 のように記載すれば
 
十分です