第7回 特許申請書作成/特許請求の範囲

 『特許請求の範囲』

 事前準備ができたら
 最初に、特許を受けようとする
 はつめいの範囲に基づき

 特許請求の範囲を考えましょう

 特許請求の範囲を書く
 プロセスは

 特許を受けようとする
 はつめいの範囲
 を文書化するプロセスです

 クレーム良ければすべてよし!

 特許請求の範囲(クレーム)
 がきちんと書けていれば

 その後の
 図面、明細書、要約書の作成も
 スムーズに行うことができます

 したがって
 特許請求の範囲の記載は
 時間をかけて
 しっかり検討しましょう

 でも
 思うはずです…

 特許庁のHPで様式を理解し
 様々な参考書で
 書き方(と書き、おいて書き)とか
 使ってはいけない表現とか…

 いろいろ理解したけど
 まったく書けません…って!

 これも理由は簡単です

 すでに解説したように
 これらは
 特許請求の範囲の形式的事項

 に過ぎないからです

 すなわち
 いわゆる実質的内容である
 特許を受けようとするはつめいを

 特許請求の範囲に
 落とし込む(文書化する)には

 あなた自身で
 特許を受けようとする
 はつめいを文書化する
 必要があります

 そこで
 そのために必要な事項を
 以下に解説します

 ★★★
 特許請求の範囲の作成は
 ➀発明の名称の決定
 ②特徴点の簡潔表現
 ③必要な構成要素の列挙
 ④関係性の組立て

 といった作成プロセスと

 この作成した特許請求の範囲が
 きちんと書かれているか
 を検証する

 検証プロセスと
 の2つからなります

・特許請求の範囲の作成プロセス

①発明の名称の決定
 まず、どのようなかたち
 で発明を権利化するか…
 を決めます

 例えば
 カテゴリー(物・方法)
 はどうするか

 同じカテゴリーでも
 見方を変えた複数のもの

 例えば
 完成品と部品
 システムと端末といったもの
 のいずれで権利化するか

 を決めます

 そして
 決定したものを

 それぞれ発明の名称とします

 〇〇システム、〇〇装置、〇〇方法
 といった具合に…

 ここで…名称というと
 じぶんの発明が分かるように
 具体的に書かなきゃいけない

 と思っているひとも多いですが…
 その必要はありません

 明細書の書き方でも述べますが

 発明の名称は
 その発明に係る物(又は方法)の

 一般名称(技術分野)又は

 それに準じた名称
 で十分です

 たまに
 発明の内容まで書いた名称
 を目にしますが…

 それでもいいのですが

 長い名称となって…
 かえって発明が分かり難くなる
 のが通常です

 したがって
 特許申請における
 発明の名称は

 その発明に係る物(又は方法)の
 一般名称(技術分野)
 のみとし

 その内容は後述する
 ・特徴点の簡潔表現
 ・必要な構成要素の列挙
 ・関係性の組立て

 で書くのがベストです

 例えば…さきの
 「容器のふたやホース接続器などのネジ部を有する物品の該ネジ部の回転を補助する回転補助器」

 について
 特許を受けようとする場合の

 発明の名称は
 「回転補助器」
 でOKです

 ②特徴点の簡潔表現
 次に
 はつめいの特徴点を

 簡潔に表現してみましょう

 この特徴点は
 先行技術と差別化した
 状態での特徴点です

 さきの
 「容器のふたやホース接続器などのネジ部を有する物品の該ネジ部の回転を補助する回転補助器」

 では
 「取っ手」の部分が
 特徴点です

 これを簡潔に
 表現してみましょう

 この取っ手は、2つのゴム材の凹凸を容器のネジ式ふたのふちに密着させるものであるとともに、テコの原理で弱いちからでもネジ式ふたの回転を可能にするもの

 であるとすると

 例えば
 「2つのゴム材の凹凸を容器のネジ式ふたのふちに密着させた状態でテコの原理でそのふたを回転させることができる取っ手」

 といった具合になる
 でしょうか

 でも、ここは
 特許請求の範囲の記載が

 はつめいから
 ずれることを防止する
 ことにあるので

 どのような記載であっても
 かまいません

 ③必要な構成要素の列挙
 次に
 必要な構成要素のみを列挙
 してみましょう

 物の発明の場合は
 部材、部品、部分的な形状や構造
 といったもの

 システムの発明の場合は
 ある機能を実現する機能ブロック
 といったもの

 プログラムや方法の発明の場合は
 ある処理を実現するステップ
 といったもの

 が該当します

 ポイントは
 できるだけ多くの
 構成要素を列挙すること

 そのほうが
 特許請求の範囲を書きやすく

 かつ
 その内容も明確になる
 からです

 ただ…注意点です!

 はつめいが成立するために
 必要な構成要素のみ
 を列挙し

 不要な構成要素は
 列挙しないこと…

 これを見極めるには
 構成要素を列挙したあとで

 ひとつずつ
 構成要素を削除してみて

 のこりの構成要素のみで
 はつめいが成立するか
 (目的が達成できるか)

 検証してみるのが有効です

 例えばさきの
 「容器のふたやホース接続器などのネジ部を有する物品の該ネジ部の回転を補助する回転補助器」

 について考えると

 はつめいの目的を達成するために
 必要な構成要素は

 回転補助器(発明の名称)
 ・把持部
  2つのゴム材
   表面、裏面、凹凸

 ・取っ手
  2つの棒状体
   一端、他端、回転軸

 となります

 ④関係性の組立て
 必要な構成要素を列挙したら
 次に、これらの関係性

 を組み立てます

 関係性を組み立てるとは
 各要素の機能などを明確に
 するとともに

 位置関係、接続関係などの
 関係性を規定すること

 です

 各要素の機能などの明確化
 は以下のようにします

 例えば
 「把持部」については

 2つのゴム材からなる
 それらは表面に凹凸をもち
 その表面は曲面を有する

 といった具合に明確化します

 また
 「取っ手」については
 さきに挙げた特徴点に基づき
 これを具体的に表現します

 例えば
 うえに挙げた特徴点だと

 テコの原理で
 そのふたを回転させる
 という部分が
 抽象的すぎるので

 これを具体的に表現します

 すなわち
 「取っ手」については

 2つの棒状体からなる
 それらの一端は回転軸として結合される
 それらの他端は回転軸を中心に開閉可能である

 2つの棒状体が閉のときに2つのゴム材の凹凸が物品のネジ部のふちに密着してネジ部の回転を補助するように構成されている

 といった具合にします

 そして
 これらをひとつの文書として
 組み立てます

 組み立てるにあたっては
 各要素の位置関係や接続関係を
 規定し

 関係性を明確にすること
 が必要となります

 例えば
 把持部と取っ手の関係性は
 把持部を構成する2つのゴム材の裏面が、取っ手を構成する棒状体に結合される 

 といった具合になります

 以上をひとつにまとめると
 特許請求の範囲(請求項1)が完成します

 例えば
 「表面に凹凸をもち、その表面が曲面を有する2つのゴム材からなる把持部と、2つの棒状体からなり、2つのゴム材の裏面がそれぞれ取り付けられる取っ手と、を備え、
 2つの棒状体の一端は、回転軸として結合され、2つの棒状体の他端は、回転軸を中心に開閉可能であり、取っ手は、2つの棒状体が閉のときに2つのゴム材の凹凸が物品のネジ部のふちに密着してネジ部の回転を補助するように構成されている、
 回転補助器」

 といった具合になります

 ここで
 ひとつ注意点です

 特許請求の範囲の記載(方式)
 には独特なものがあります

 そのうちの一つに
 先行詞がある名詞

 すなわち
 特許請求の範囲中に
 同じ要素(名詞)が2回以上でてくる
 ときは

 2回目以降の要素に先行詞
 があることを示す「前記」
 という文言を追加して

 これらが同じ要素であることを
 明確にしなければなりません

 もし、これを怠ると

 不明瞭として拒絶されたり
 異なる要素と判断されたり
 するので

 注意しましょう

 具体的に
 さきの特許請求の範囲を
 この方式に従い修正すると
 以下のようになります

 「表面に凹凸をもち、前記表面が曲面を有する2つのゴム材からなる把持部と、2つの棒状体からなり、前記2つのゴム材の裏面がそれぞれ取り付けられる取っ手と、を備え、
 前記2つの棒状体の一端は、回転軸として結合され、前記2つの棒状体の他端は、前記回転軸を中心に開閉可能であり、前記取っ手は、前記2つの棒状体が閉のときに前記2つのゴム材の前記凹凸が物品のネジ部のふちに密着して前記ネジ部の回転を補助するように構成されている、
 回転補助器。」

 なお、これは
 特許請求の範囲に限ったこと
 ですので

 後述する明細書や要約書では
 不要なことです

 すなわち
 明細書や要約書の書き方(フロー)で
 特許請求の範囲をコピペする作業

 があるのですが…

 このとき
 逆に「前記」があると

 まぎらわしく
 読みにくい文書に
 なってしまうので

 これら明細書や要約書では
 「前記」を使わないように

 してください

 ★★★
・検証プロセス

 特許請求の範囲を作成したら
 この作成した特許請求の範囲が
 きちんと書かれているか…

 を検証します

 検証は
 書いた文書に沿って
 じぶんで絵を描いてみてください

 きちんと絵が書ければOKです

 

 きちんと絵が書けないときは
 特許請求の範囲の記載を
 きちんと絵が書けるように

 見直しましょう!