第1話 やり残したこと

 死ぬまで元気!
 をモットーに
 毎日を精力的に生きるM氏

 そのM氏が唯一
 やり残したこと…

 M氏は
 和歌山に生まれ
 大阪に上京し

 30歳のときに「Mボタン」
 という商号で
 ボタン製造の事業をはじめる

 35歳のとき
 当時のボール盤(加工機)で
 より簡単に
 ボタンを製造できないか…

 思考錯誤し
 あるアイデアを思い付く

 しかし当時は
 特許をとるお金も暇も
 なかった…

 ので
 そのアイデアは
 自分の工場でのみ
 秘密裏に実施し

 第三者に
 公開することはなかった

 75歳のとき
 40年におよぶ
 じぶんの事業をたたみ

 いままでの
 じぶんの経験を活かし

 じぶんが考えた
 ボール盤を用いて
 小物グッズなどを作る
 趣味を楽しんでいた

 このとき
 数人のひとから

 あるものを
 作ってほしいんだけど…

 もう…これと同じものが
 ないんだよね

 といった注文を受ける

 これについて
 その数人に聞いてみると

 最近の製作機械は
 NC(数値制御)で高いし

 低価格のハンディタイプ
 の切削具だと

 精度が不十分…で
 とのこと

 でも~これ

 じぶんが40年前に考えた
 アイデアを用いれば

 簡単に解決できる
 んだけど…

 まてよ…

 いまでもこれだけの
 ニーズがあるなら

 40年前に考えたアイデア
 これ…

 もし特許をとってたら
 大儲けできたんじゃないか

 いまさら
 特許は無理だろうし…

 残念!

 これが
 M氏が唯一やり残したこと!